これからの人事! 組織規模で異なる人事の担当範囲とは

前回のコラムでは、人事が柱とすべきKPIについて取り上げました。

その中で、業績を人事視点で分解すると、3つの要素「人数」「定着率」「一人当たり売上高(又は営業利益)」が浮かび上がる、というお話をしました。実は、これらの要素で人事の業務を分けていくと、業務が整理できるようになります。つまり、どの仕事が何に結びついているのか、がハッキリするのです。

①人数・・・主に採用・配置に関する業務
②定着率・・・主に賃金・エンゲージメントに関する業務
③一人当たり売上高・・・主に人材育成・評価に関する業務

こう考えると、「採用」と「賃金」「人材育成」には力を入れていることを自負する企業が多いのですが、「配置」「エンゲージメント」「評価」には力が入っていない企業が多いことに気づきます。

どういうことかというと、会社を退職したり意欲が減退したりしている人の多くは、まさに企業が力を入れていない「配置」「エンゲージメント」「評価」の部分がボトルネックになってしまっているのです。

①配置・・・
ねらいを説明しないが故に、納得いかない人員配置(駒かところてん扱い)
②エンゲージメント・・・
会社や上司との繋がりの乏しさ(よそよそしく他人行儀)
③評価・・・
抽象的で労いや承認の無い中途半端な評価(腫れ物扱い)

つまり、「よそよそしく他人行儀で腫れ物のように接しておきながら、突然駒のように扱われる」わけですから、それは誰だって会社のことが嫌になりますよね。でも、これが退職者の多い企業に起こっている出来事となります。現在できていなければ、やり替えれば良いわけですから、ここを仕組みから見直して現場で実行管理できるレベルにすることで、人員が活性化していくことになります。

たとえば、当社ではその一環として「ココトレ」というシステムとサービスを提供しています。これは、会社と従業員、上司と部下のエンゲージメントを高める仕組みであり、経営者や上司のスキルや能力に依存せずに自然にエンゲージメントを高めることができます。

組織の規模によって異なる人事のやるべきことを理解する

さて、企業のビジネスモデル作りでも組織作りでも同じことが言えますが、経営から現場に至るまで誰が何を担うのか、を至極単純に考えると以下のようになります。

①経営層が担当・・・戦略立案(=方針・戦略(基準)・計画づくり)
②管理者層が担当・・企画提案(=仕組みづくり)
③リーダーが担当・・実行管理(=落とし込みとチェック、指導)
④スタッフが担当・・オペレーション(=現場作業)

こうした担当範囲を、人事の主たる業務である「人数(=採用・配置)」「定着率(=賃金・エンゲージメント)」「一人当たり売上高(=育成・評価)」の軸で階層別に上流工程から担当分け(①方針や計画の策定 → ②仕組み作り → ③実行管理 → ④現場作業)していくと、下表のようになります。

表1.人事業務の担当範囲区分

組織規模が大きい企業であれば、上記の階層と担当業務が合致すると思います。一方、組織規模が小さい企業であれば、経営層や人事担当者が①~④の全てを行わなければならない、といったことも出てきます。

これを、従業員数の目安で区切ったものが下表のようになります。
必ずしもこうでなければならない訳ではありませんが、企業規模によって凡そこのようになっている、ということがここから理解できます。

実際、組織そのものや組織ルールは作るだけで終わりというものではなく、管理できるレベル(いつ、誰が、どこで、何を、どうする)にして、実際に実行させて管理する(実際に実行できているかチェックして指導し改善ないし処分する)ことが必要ですから、甘く考えてはいけません。極めて少数のメンバーで実行管理などできるはずがないのです。

表2.従業員区分に伴う人事業務の担当範囲

製品やビジネスモデルを一から作り上げてきた経営者や管理者であれば、自分なりのこだわりを持って組織づくりや仕組みづくりを行い、実行管理して全てを把握するかもしれません。
しかし、元々あった製品やビジネスモデルを活用して拡大してきたような中小企業経営者や管理者の場合、「組織づくりや仕組みづくりを経験したことがない」という方ばかりですから、何をどのように行えば良いのか見当がつきません。

本来、自分の会社なのですから、自分で仕組みを作って実行管理まで行い、全てを把握しないといけないわけですが、「人材や組織のことはどうにも苦手で…」「元々フランチャイズで行なってきたので、自分にはよくわからない」などと仰ることも多く、自ら学び、管理し、投資しようとしないのが実状です。

こうした経営者は通常、新しく儲かるビジネスモデルを取り入れさえすれば業績が拡大するし人もついてくるから、という発想で会社経営を行っています。両輪のうちの片輪としてはそれで回るのですが、もう一方の片輪がない(=組織づくりができていない)故に、一定の売上規模・従業員規模で留まることとなってしまい、それ以上伸びないというジレンマに陥ります。

これは、上記の表にもあったような、組織や人材に対して適切な処置を施していないから、ということが症状となって表れているわけなのですが、多くの経営トップはそのジレンマに気づかずに同じことを繰り返します。「同じこと」とは何かというと、事業を大きくしてきた成功体験から、組織や人材に対して同じやり方で接し対処するということを繰り返すということです。

例えば、

「従業員を粗雑に扱う」→
「従業員が退職する」→
「また雇えばいい」→
「採用する」→
「現場に放り込む」→
「従業員を粗雑に扱う」→
「従業員が退職する」…

を繰り返す、といったようなことです。

古参社員は「うちの会社はそういうもの」「生活のためには仕方ない」といった発想で残っているため、経営者も同じやり方でも古参社員のように残っている従業員もいるのだからそれでよい、と考えて同じことを繰り返します。

しかし、会社の規模が一定大きくなってくると、様々な人材が流入してきますから、会社の考え方についていけない多くの従業員が退職していく、または意欲が減退して一人当たりの業務効率が悪化することとなり、結果として企業規模を大きくすることができなくなる、という事態に直面するわけなのです。

上記のような中小企業は、以下のように組織体制を構築していくことが必要となります。

経営側のメッセージとして、組織体制の構築に対する優先順位をグッと引き上げることです。
「結局、売上さえ取っておけば良いんでしょ?」などと従業員に思わせるような状態では組織開発することなど土台無理です。

その上で、従業員の退職理由が何であるのかの目星をつけ、退職と補充のループから抜け出すことが肝心です。退職と補充のループを抜け出すためには、業務の標準化・定型化を行い、現場社員の労務管理体制(勤怠や扱い方)を見直し、エンゲージメントを高める施策を打つ、計画的な育成体制を整える、組織上の指示・命令系統や権限を明確にする、こうした取り組みが欠かせません。

また、最低限の等級制度や評価制度、賃金制度を整え、経営者や上司の思いつきと主観で判断するのではなく、法とルールで統治している姿を見せていきます。従業員のステップアップや昇給などのニンジンをぶら下げることも必要ですし、場合によってはトラブルを度々起こす従業員や管理者に対しては明確に「処分通知」を出し、人事評価も下げてご退場いただくことも必要になります。

このような組織体制の構築を一つひとつ経営トップと人事担当者が共に整備していくことが業績拡大と永続的な繁栄に繋がっていくのですが、これらを一から作り上げることはほぼ無理でしょう。ですから、専門家の力を借りて時間をお金で買った方が早いのです。

一方、これが中堅~大企業となると同じ企業でも抱える悩みは別です。
歴史のある中堅~大企業は多くの場合、規模が大きいために制度を変更しようとしても多くの利害関係者を調整せねばならず、結果として「その企業らしさ」が無い制度になったり、調整に要する時間から適したタイミングに手を打てないなどの症状が出てきます。

さらに過去作られてきた制度や待遇面から、従業員に不利益変更をすることができず苦渋の選択を迫られることとなります。結局、経営者が「組織戦略」としてどういった会社にしていくのか?を明確に打ち出していくことが判断基準になるでしょう。

上記のような例に対しては、組織規模が大きくなりすぎることが一つの原因になりますので、「選択と集中」「原点回帰」などをお題目に、分社化をして不採算事業を切り離して整理解雇する、評価制度を大幅に改定して信賞必罰を明確にする、業務フローを見直してチェック体制を強化し組織をフラット化する、といった大幅な再構築を行う必要があります。

組織規模に応じて課題感も異なりますが、いずれにせよそれらが、KPIにどのように紐づいているか、ひいては会社の永続的な発展につながるか、という視点で組み立てていくことです。

次回は、実際に現場で行われる機能別の人事業務について、お伝えしていきます。

一本亮
本コラムの執筆者プロフィール
ココロデザイン株式会社 代表取締役一本 亮

1978年生まれ。福岡県福岡市出身。東京海上日動火災保険株式会社等の勤務を経て、健康食品メーカーであるキューサイ、化粧品や医薬品を製造販売する新日本製薬の人事部門で組織編成を始め、採用・教育・人事制度・労務管理等の人事実務全般に従事し、制度設計と運用の両面で成果を残す。
2014年ココロデザイン株式会社を設立、ベンチャー企業~東証一部上場企業に至る人事戦略から実務に至るコンサルティングを手掛ける。2018年、人事経験をベースに人材定着・育成に有効なクラウド型定着検査サービス「ココトレ」をリリース。中小企業のみならず上場企業や大学等の教育機関も活用。

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