人事担当者が知っておきたい組織や人材をコントロールできない理由と対応策

皆さんの会社の若手社員は元気があるでしょうか?または育っているでしょうか?
早期に退職をしたり、上司がいくら口酸っぱく言っても「あまり言うことを聞かない」といったことはないでしょうか?
今回は組織論の観点から、「なぜ若手社員に元気がないのか?育たないのか?そもそも、言うことを聞かないのか?」についてお届けしたいと思います。

日本が弱いのは、国としての「目的」がないから。

国家であれ、企業であれ、家族であれ、複数の人間が所属し相互作用を及ぼし合っている以上は集団または組織となります。特に、組織の成員が意識する・しないに関わらず、国家や企業は本来「有目的」的な存在なのです。

現在の日本が組織として見た時に非常に脆弱なのは、ごくごくシンプルに組織論の観点からいえば、「国家組織としての目的がない」からです(強いて言うならば、権力を握った官僚と政治家の懐を肥やすことがそうかもしれませんが…)。

古くは戦前の「大東亜共栄圏」を目的とした富国強兵(目標)と対になる概念として、戦後は所得倍増計画や高度経済成長などの「経済成長」を掲げましたが、経済そのものは国を強化するための「カネの側面」の目標であって、国家としての目的ではありませんでした。

そのため、アメリカやロシア、中国といった「覇権」という目的を持つ国家組織と異なり、日本は風が吹けばすぐになびいて倒れてしまうのです。たとえば、中国は「中国製造2025」を掲げて、世界のものづくりの中心地になることを目標として国家の政策を進めています。もちろん、その根源的な考えには「中国がアメリカから世界の覇権を奪取する」ことで「中華思想で世界を染める」という目的を有しているわけです。

このように、日本が国家としての目的を持っていないがために、教育分野においても「どのような人材を育てるのか?」という目的が見いだせず、どこにも力点がない現在の教育プログラムが出来上がってしまっています。そのため、国と同様に吹けば倒れる学生や人材が社会へと出てきている、という状態にあるわけです。

もし、「日本は世界の中でこういう稀有な存在になる」「だから、こうした人材を育成する」そうした目的と筋書きがあるのならば、国民にも広く知らしめるべきですし、それが各種政策に反映されるべきといえます。でも、私はニュースを見ても、新聞を見ても、そうした情報を得ることができません。つまり、無いの同じといえます。

多くの企業も「目標はあるが目的がない」

さて、ではなぜ国家組織の話をしたのか?というと、「多くの企業が、日本の無目的な状態とあまり変わらない」からです。「うちは1000億企業を目指しているんだ」「いや、うちには経営理念があるぞ」「わが社は毎日、社是・社訓を唱和している」と言われるかもしれません。

ただ、実際に社員が自ら理念を日々体現し、社是・社訓が日頃の仕事の中で飛び交う状況にあるのか?実践できる人材育成のためのプログラムが構築できているか?と言われれば、多くの会社はNOと言わざるを得ないのではないでしょうか。多くの会社が日々の雑多な業務に追われている状態といえます。

そもそも、経営者や幹部が経営理念を日々実践し、社是・社訓に基づいて行動しているのか?です。それだけ厳しく自分自身を律している経営者のほうが圧倒的に少ないです。つまり、経営者自らが題目にしているものを、現場の管理者や従業員が本気になって取り組むはずがないのです。

親が自分のことしか考えないのに、子どもに「他人に親切にしなさい」と言っているのと同じです。そんなの、するわけがないですね。

今、私たちの身の回りで起きていること

監視と疲弊。
それは、企業だけでなく、オンラインを中心とするネット社会、そして地方を含めた日本社会全体で起きていることです。

日本は昔からよく「村社会」と呼ばれていました。
歴史などでも習った覚えのある「五人組」などの慣習・仕組みにより、互いに監視し合うよう仕向け、権力者から見た余計なこと(クーデター)を考えさせないようにしてきました。
権力者が繁栄し続けるという目的にかなった社会を継続するために必要なことだったのです。

そうして村のルールに適応する者には関心を寄せて優遇し、そうでない者には自己責任という名の無関心と徹底的な嫌がらせを与える。こうして無理矢理に村人を適応させ、村という組織を形成・維持してきました。
ただ、それが通用したのは他所に出ていく場所がない時代の話。現代社会では、出ていく都市があります。だから、地方から都市に出ていく若者が多いのは、「仕事がないから」じゃないんです、「監視されて息苦しいから」なんですね。

これは、実際に某国においても政策として行なわれていることですが、日本においても地方企業や地域社会、同業者組合の在り方そのものでもある、といえます。

その社会を上り詰めた長老的な存在の人があらゆる既得権益(パワー)を握り支配的になることで、その社会の人々の料簡は狭く息苦しくなり、いっそ取り巻きになって適応するか、離れるかの選択を迫られます。
当然、その地域で商売をせざるを得ない人たちは監視によって疲弊し、村社会の長に迎合するか、何とかつかず離れずの距離を保つかで精一杯となるのです。

面白いことに、こうした村社会における上下の関係性が社会の風土基盤そのものとなり、長老がその場にいなくても監視や息苦しさが伝播していくことになります。

組織論で言うと、これこそが「規範」に当たります。

規範とは、「こういうもの」「こうあるべき」を空気・雰囲気・ムードで表したものです。
人間は環境に適応する(学習する・影響を受ける)生き物で、自らが置かれている状況を他人とも共有しようとするのです。

では、国家として、このムードをどうやって醸成しているのか、というと「ニュースソースの統制」ということになります。不都合なニュース、またはそのニュースを発信しようとする者を徹底的に潰したり批判したりするのです。

実際にやっていますよね?どのニュースソースを見ても、なぜか同じニュースが出ている。

どうでも良い芸能人のゴシップとか、その家族のこととか、これを全国民に知らせる必要があるのか?と言わんばかりのニュースにあふれています。逆に、国民の感情を逆撫でするようなニュースが少ないですよね。そうしたニュースが削除されることもあるのです。
(さすがにコロナの影響に関しては国民感情が爆発しましたから、抑え込むことができなかったですが。)

そうです、これは国家の規範形成上、極めて「意図的に学習をさせている」のです。
日本という国そのものは、国家組織としての目的は持っているようには見えませんが、規範統制はきちんとできている組織である、ということが言えるのです。

企業経営者や幹部も本来は、組織図を書き換えて管理する気になるのではなく、この「ムード」を管理しなければなりません。現状、多くの会社ではここも野放しになっていますが、私たちは、この「ムードの管理」を「状態管理」と呼んでいます。

つまり、ドライな言い方をすれば、組織にとって良いことをする人は称賛されるように仕向け、ほどほどの人は目立たないようにし、思った動きを取らない人は徹底的に無視するか、恥ずかしい思いをさせるように仕向けるのです。それが人を上手く管理するコツなのです。

では、ここまでに組織で重要となる二つのポイントを述べてきました。

一つは、国家にも企業にも「目指すべき目的」が必要であること。
そして、もう一つは、国家も企業も「ムードを管理(状態管理)」する必要があるのです。

会社の「目的がなく」「ムードが放置」されるとどうなるか?

多くの地方企業においては、会社の目的が不透明で、組織のムードも野放しになっています。
そうした企業は一切の統制が効きませんから、「パワーを持つ者」が「自分色に染める」こととなります。それが創業者なのか、営業の責任者なのか、ベテラン社員なのか、それはわかりません。

ただ、目的が見えず組織ムードも悪いと、誰かがのさばってしまい、村社会のようになりますから居心地は悪いわけです。結局、地方から出ていく若者のように、新人(新卒や中途入社者)が早期退職を繰り返すことになります

具体的には、「離職ループ」と呼ばれる状況に陥っていきます。どういうものかというと、

①入社したスタッフが要領を得ない(=育てていない)
②それを見た上司や先輩がイライラする
③スタッフが委縮したり、上司や先輩・周囲からのハラスメントが行われる
④本人が適応できず退職する(又は根性のあるアクの強いスタッフが残る)
⑤上司や先輩にしかできない仕事が増える、
⑥また採用募集を行なうが上司や先輩との格差が開いて①に戻る

という「離職ループ」が組織で発生しているのです。

どの会社でも、目標管理や行動管理は行なわれています。ただし、何のための会社か仕事か目的が見えませんし、組織のムードが活気づくように統制できていません。経営者や管理者の組織への関心も薄いので、当然ながら、スタッフがどういう気持ちが働いているのか?という「個人別の状態管理」もしていない。社員やパートがどんな状況にあるのか、誰も把握していないのです。

結果として、スタッフは孤独感を感じたり、苦しい時にSOSを出せずに自ら手を放すようにして心を閉ざしたり、辞めやすくなります。

これは、定性的な話なので売上のように簡単に数値化できるものではありませんが、離職率・ES(従業員満足度)といったデータから見えてきます。そして、短期的というよりは、中長期的にボディブローのように組織を弱体化させていきます。

そして、「そうなるのは自己責任」という暗黙のルールの下に、自分のことにしか関心のない上司と孤独な部下(または自分のことにしか関心のない部下)で構成された組織が出来上がり、チームワーク・組織力を発揮できない状態になっていきます。

こうして組織が腐っていくのです。

では、どのように会社で実践すれば良いか?

今後、リーダーシップを執る経営者または責任者である皆さんがしなければならないことは、「何のための会社か?部署か?仕事か?」を明確に定めること。そして、そこに基づいて一貫性のある言葉や態度、統制を取っていくことです。
この2つにより、組織のムードが決定されていくこととなります。

それが、一過性のポーズに過ぎないか、本質的なメッセージなのか、は部下である従業員が上司である「日々の皆さんの言動と態度、行動」によって測っていきます。
皆さんの発言や態度に一貫性がなければ「あぁ、この人は体裁を整えるために言ってるんだ」または「自分の保身で言っている言葉だな」ということがすぐにバレてしまいますから、部下は皆さんの言うことを聞きません。皆さんが日頃行なうように体裁を整えて動くようになります。逆に言うと、皆さんが本気になってムードもそのように統制していけば、「自分のために言ってくれている言葉だ」ということもわかるわけです。

前者のように経営者や管理者が「会社のため、部署のため、上司の立場を守るため」に指示命令すると部下は「給与などの条件に見合った分だけ仕事をする」やらされ状態になることがわかっています(=外部的動機づけ)。さらに、動きが悪いから、と人格を否定するような行動を取り続けると「ハラスメント」になっていきます。

一方、後者は会社のためでもありますが、仕事を通して「部下の成長につながり、人生を豊かにすることが目的である」と真剣に伝えていくことで、部下は「本気になって仕事をする」前向きな状態になってくれます。「部下を成長させ、部下を成功させるため」という日頃の対話が距離感を縮め、力強いムードを生んでいくのです

一例として、最近とある企業の新入社員フォロー研修時において、何事にもリアクションや喜怒哀楽が薄い受講者に対して、私が大きな声で怒鳴りつけたことがありました。普通なら受講者がふてくされて研修そのものが壊れてしまいそうですが、そうならず、その後の態度は真剣そのものになってくれました。

では、何を言ったからそうなったのでしょうか?実はその時に、

「大きな声を出したが怒っているんじゃない、このままだと皆さんの将来が危ないと感じるから真剣に言っている。」
「会社のためじゃない、君らのこれからが心配(気がかり)だから言っている。」
「同じ時間を無駄にするのか、活かすのか、どっちのほうが皆さんの人生が豊かになるか。」
「目の前にいるのは動画やアプリじゃない、自分たち講師は生身の人間だ。だからコンテンツみたいに消費するのではなく、表情や態度、言動でリアクションしてほしい!」

そういう言葉かけを何度も行ないました。

会社の理屈や体裁、忖度・立場でものを言っていない、
『自分(受講者本人)のために言ってくれているメッセージ』
『人として訴えかけているメッセージ』

だから相手の心に響いたわけです。役職や権力などのパワーで言うことを聞かせるのではなく(使い分けが必要ですが)、仲間として、人生の先輩として部下を励ましたり、心配したり、ねぎらったり、真剣に言ってあげることが大切になってくるのです。

「一緒にやろうぜ。自分は君ができると見込んで採用したんだから。」
「説明できることばかりじゃない、のめり込んでやってみないとわからないことがある。」
「約束したのに何でやってないんだ。これはあなたの人生を良くするためだろう。」
「何でこんなミスをするんだ。君の力はこんなもんじゃないだろう。」
「どこででも通用するようになったほうが、後々自分がラクになるだろう。」

こうした、人と人との対話が部下を成長させていくことになります。

ただ、心の溝がある状態・心の距離が離れた状態だったり、これまでのしこりが蓄積して会社や人生に不満のある人には、まず不満や不安を口に出させて発散させることが大切となります。我慢すると爆発したり、塞ぎこんだり、疑心暗鬼になるからです。そうなる前に5分とか10分でも良いので、しっかり吐き出させて遮らずに受け止めましょう。

多くの場合、上司は部下が不満や不安を吐き出すと、「すぐに解決しないと」「組織に反抗的になっている」と感じがちですが、一方の部下は不満や不安を吐き出すと気持ちが解消して意欲が戻ってきます。
また、部下は目の前の問題がすぐ解決するとは思っていないので、こちらから「すぐに問題って解決しないよね。だから、一緒に少しずつ良くしていこう」このように言うと、大抵の場合は納得してくれ、その後自主的な相談が出てくるようになるのです。

他に、現場にはシラケてしまったり、腐ってしまったりしている仲間もいます。
これは、過去本人なりに一生懸命やろうとしていたけれども、相手にされずに心を完全に閉ざしてしまっている状態を指しています。管理者として、そうさせてしまったこと、またそうさせている心の距離感が問題といえます。一気に雪解けするようなことはないので、徐々に「心を開いていいんだ」と思えるように対話を重ねていくことが重要です。

それも「ムードの管理」になってくるわけです。

あなたがリーダーとして本気になれる目的がないのであれば、後進に道を譲ったほうが良いでしょう。後進がいなければ、せめて組織のムードを管理して、後進が育つように仕向けていく必要があるのです。

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一本亮
本コラムの執筆者プロフィール
ココロデザイン株式会社 代表取締役一本 亮

1978年生まれ。福岡県福岡市出身。東京海上日動火災保険株式会社等の勤務を経て、健康食品メーカーであるキューサイ、化粧品や医薬品を製造販売する新日本製薬の人事部門で組織編成を始め、採用・教育・人事制度・労務管理等の人事実務全般に従事し、制度設計と運用の両面で成果を残す。
2014年ココロデザイン株式会社を設立、ベンチャー企業~東証一部上場企業に至る人事戦略から実務に至るコンサルティングを手掛ける。2018年、人事経験をベースに人材定着・育成に有効なクラウド型定着検査サービス「ココトレ」をリリース。中小企業のみならず上場企業や大学等の教育機関も活用。

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