部下との面談を上手くやる/続けるコツ~1on1ミーティングが上手くいかないワケ~

ある日、管理職であるあなたの元に人事部から1通のメールが届きました。
『昨今、会社の離職率が高いので、離職防止策の一環として、毎週定期的な部下との面談実施を全管理職に課します。』
ただでさえ人不足で現場が回らないのに、この上定期的に部下との面談を強いられるあなたは深いため息と共にスケジュールで真っ黒になった手帳に目を落とすのです。

次の日重い腰を上げ、部下のA君とB君にそれぞれ時間を割いてもらい、面談の機会を作りました。

まずはA君との面談です。面談開始後、早速あなたはA君の話を聞こうと、こう切り出します。

『最近どう?仕事は大丈夫?』

てっきり不満や文句があふれ出てくると思っていたあなたは、A君の返事に拍子抜けしました。

『いや、大丈夫です!』

その後はいろいろとあなたの方から質問してみるものの、A君は『大丈夫』の一点張り。結局具体的な話は何もでないまま、面談は終了してしまいました。

A君の表情も特に暗くなく、何も問題は無いと判断したあなたは、安心して日々の業務に戻りましたが、1ヶ月後A君から突然の退職願いが出され、引き留める間もなく、A君は会社を去っていくのでした。

またB君とも面談の機会を設けたあなた。B君は日頃から仕事態度が真面目で、特に問題はないと判断したあなたは、こう切り出します。

『何か話したい事ある?』

B君は案の定

『う~ん、特に何もないです…』

結局、あなたが日頃の業務に関して一方的に話をして面談終了。
B君とは何度か面談を重ねましたが、いつも『特に何もないです』との反応に、だんだんと面談をする機会が減ってきて、最後には面談をしなくなってしまいました。

上記の2パターンは面談あるあるで、『大丈夫です』『特に何もないです』は面談をすると多くの部下から出てくるキーワードです。

今回のコラムでは、

1.部下との面談が上手く行かない・続かない理由
2.面談を上手くやる・続けるコツ
3.上手い面談のやり方

についてお話したいと思います。

「上司との面談中、部下の気持ちは?」

あなたとの面談中、A君はハキハキと務めて明るく話をしているかもしれません。
でもその心の中では、

・何か怒られる事したかなぁ(怯え)
・ただでさえ忙しいのに、早く終わらないかなぁ(めんどくさい)
・全然大丈夫じゃないけど、今言う話じゃないよなぁ(遠慮)    ect

またB君はあなたの話を真剣に聞いているように見えるかもしれません。
しかし、その心の中では、

・ほんとに何を話せば良いか分からないなぁ(無関心)
・「何かある?」ってなんだよ!何を話させようとしてるんだ…?(不信)
・この人に話してもしょうがないんだよね…(諦め)      ect

等と思っています。

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部下との面談が上手くいかない・続かない理由

つまり、上記の例の様にいくら上司が面談の機会を設け、部下と心を通わせようとしても、部下との温度差が大きく、効果も得る事が出来ないので、定期的な面談を継続しようと頑張っても直ぐに断念してしまうのです。

ここには大きな過ちがいくつか潜んでいます。
まず一つ目の過ちが、上司が【面談】の目的を明確にしていないという事です。大前提として、【面談】には大きく2種類あります。①【業務指導を目的とした面談】、いわゆる評価面談や育成面談といった類いのものです。そしてもう一つが②【人間関係構築を目的とした面談】です。

世の中の多くの上司がこの2つをごちゃ混ぜにして面談をしてしまうために、部下からすると、何でも話していいよと言われ話してみるといつの間にか説教や業務指導が始まり、非常にストレスフルな時間を過ごす事になり、もう2度と面談はやりたくないとなってしまいます。
なので、面談に臨む前に面談の種類をどちらにするのかを決めてスタートする事が重要なポイントとなります。

二つ目の過ちは、上司が部下との人間関係(心の距離感)を過信している事です。自分は部下の話はよく聞いている(つもり)、常に部下の事を気にかけている(つもり)ので、きっと部下は自分の事を頼ってくれている・尊敬してくれているはずだと部下との人間関係(心の距離感)を冷静に判断できない上司が増えてきています。

私たちはこの問題を取り上げる際に、下図(図1)のような上司と部下の距離感を示す5つのレベルを用います。


(図1)上司と部下の距離感

レベル1が部下との距離が最も遠く、レベルが上がるにしたがって距離は縮まっていきます。仕事柄多くの管理職を見てきましたが、残念ながら殆どの管理職がレベル1若しくはレベル2辺りをウロウロしている状態です。

先ほどの例にもありましたが、当然ながらレベル1・2の距離感しかない上司が部下に『大丈夫?』や『何かある?』と言っても部下が本音を話してくれるはずもありません。何よりも大切なのは、上司が部下との距離感を客観的に把握し、距離感のレベルに合わせた質問をする事が大切なのです。

※部下との距離感を簡単にチェックできるシート『上司レベルチェックシート』を最後に添付しておきますので、参考にして下さい。

面談を上手くやるコツ・ポイント

では【面談】の2つの大前提を理解した上で、面談を上手くやるコツ・ポイントをお伝えしたいと思います。
ここからは、定着率を上げる事を目的とした【人間関係構築を目的とした面談】について記述します。(【業務指導を目的とした面談】については、別の機会に記述します)
【面談】を上手くやるには大きく3つのコツ・ポイントがあります。

上司レベルに応じた面談の基本パターンを選択する
上司レベルに応じた質問を投げかける
面談の“型”に当てはめて進行する

です。それでは詳しく見ていきましょう。

上司レベルに応じた面談の基本パターンを選択する

実は【面談】にはいくつかの基本パターンが存在します。

① ガス抜き型
② 課題解決型
③ 支援要請型

まず①ガス抜き型ですが、上司側の余計なアドバイスや指導は一切行わずに、部下の悩み又は不満等をひたすら受け止めて聞いてあげる面談です。その結果、話を聞いてもらった部下はスッキリして前向きになることができる。

次に②課題解決型ですが、部下の悩みや抱える課題を受け止めて聞いたうえで、課題を一緒に解決しようとする面談です。その結果、上司がひと肌ぬいで調べたり、担当部署に掛け合うことで部下が感謝と恩義を感じるようになります。

最後に③支援要請型ですが、部下の抱える課題を受け止めて聞いたうえで上司も解決できない案件を所属外に支援要請する面談です、その結果、上司では判断がつかない案件を放置しないことでトラブルや退職を未然に防ぐことができるようになります。

上記の基本パターンを上司レベルに合わせて目的ごとに選択していく事になりますが、これらの基本パターンの土台となる信頼構築型が存在します。(図2)


(図2)面談の基本パターン

これら4つのパターンを上司レベルに合わせて使い分ける事で、面談後の満足感に大きな影響を及ぼす事になり、面談を失敗する確率をグンと減らすことができます。
ちなみに、面談の基本パターンと上司レベルの関係性は以下の様になります(図3)


(図3)基本パターンと上司レベルの関係性

上司レベルに応じた質問を投げかける

私たちは普段生活をする上で、他人との距離感を結構気にしています。例えば、初めて会った人にいきなりプライベートに踏み込んだ質問をしたりしませんし、ましてや自分の人間性や生活環境などのパーソナルエリアについても話をする事が無いと思います。しかし相手が部下になったとたん普段出来ていたことが出来なくなってしまいます。
その理由としてはいくつかありますが、おそらく大きな原因として、上下関係が影響しているのではないかと思われます。上司である自分の方が偉い、部下は上司の命令に従うものと言った考え方が無意識にあり、距離感を無視した質問を投げかけてしまうのです。

なので【人間関係構築を目的とした面談】をする場合は、上司・部下、年上・年下、男性・女性と言ったセグメントを一切捨て、同じ人間同士といったスタンスで臨むようにして下さい。
面談は人間同士がコミュニケーションをとる場です。一方通行の会話ではなく、双方が自分の意見や考えを伝え合ったり、悩みや不安等を分かち合う事が大切になります。自分は上司だから、年上だからと言った理由で一方的に話したり話をさせたりするのではなく、立場、年齢に関係なく、相手に本音をぶつけるようにして下さい。自分が自己開示をしなければ相手も自己開示しない事を肝に銘じて下さい。

その上で大切な事は、部下との距離感に応じて質問の内容を変えるという事です。上記にもあるように、例えばレベル1の上司が部下に悩みや不安を聞き出す質問をしても、部下の方は同じ場所にいたくない・一緒の空気も吸いたくないと思っており、一刻も早くこの場から立ち去りたい気持ちでいっぱいです。ようするに、レベル1の状態でいきなりガス抜き型や課題解決型の面談をしようとしても関係が拗れるだけで、決して良い結果を生みません。まずは互いの信頼関係を構築する事を優先すべきなのです。

レベルごとに面談で何を目指し、どの様な質問をすれば良いのか、いくつか例を挙げおきますので参考にされて下さい。

〇レベル1:
信頼関係が全くないので、まずは互いを少し知る事から始める

〈面談のゴール〉
・互いに新しい一面を発見する
・互いのもつ印象が変わる
(面談時質問)
・最近の良かった出来事
・気になるニュースや芸能ネタ
・趣味や好きなこと

〇レベル2:
信頼関係はまだ浅いので少しだけ本音を話そうかなと思える関係を目指す

〈面談のゴール〉
・互いの人格、個性が分かる
・互いにどう思っているのかを話せる
(面談時質問)
・今までで一番ハマった事とその理由
・最近自分が頑張ったこと
・自分の好きなところ、嫌いなところ

〇レベル3:
日頃感じている不満や悩みを吐き出しスッキリする

〈面談のゴール〉
・互いの状況や立場を理解し共感する
・一緒に頑張ろうという気持ちになる
(面談時質問)
・仕事や生活で抱えている不満は?
・どんなところ仕事のやりがいを感じる?
・より良い関係を築くために互いに出来る事は何?

〇レベル4・5:
抱える課題を分かち合いより明るい未来を作る為の具体的な行動を決める

〈面談のゴール〉
・課題を共有し解決策を前向きに話す
・一緒に成長してくための計画を作る
(面談時質問)
・互いに解決できない課題を他に投げれないか?
・あなたの課題を上役にどう伝えると理解してもらえるか?
・互いの人生をより良くするために、自分が協力できる事は何か?

面談の“型”に当てはめて進行する

面談はただやみくもに進めればいいと言うものではなく、上手くやる“型”のようなものがあり、大きく分けると以下の3つの基本手順に分類されます。

〈面談の基本手順〉
Step1.オープニング
Step2.面談
Step3.クロージング

それでは、それぞれのStepを見ていきましょう。

〇Step1.オープニング
面談を進める際に気を付けて欲しい点は、いきなり本題から入らないという事です。まずは日頃の苦労をねぎらう言葉や感謝の声掛けをして、お互いにリラックスした雰囲気の中で話が進められるよう“場”を作る事を意識して下さい。
また、親近感を与える姿勢や態度で話をするようにして下さい。無意識で腕を組んだり、足をゆすったり、ふんぞり返る姿勢になってしまう人もいますが、そこはしっかりと意識をして自分をコントロールするようにしましょう。

あと、面談を始める前に面談の目的(基本パターンの確認)と面談のゴール(終了後どのような状態になっているのか)を互いに確認しましょう。

〇Step2.面談
面談ではまずは部下の話に耳を傾けましょう。最初はなかなか話をしてくれないかもしれませんが、その時は焦らせずに相手のタイミングまで待ちましょう。もしどうしても相手が話難そうであれば、まずは上司から自分の話をするようにして下さい。
その時の留意点として、必ず上司レベルにあった質問をするよう心がけること、また決して説教や業務指導はしないようにしましょう。今回の面談は上司と部下ではなく、同じ人間同士といったスタンスで臨むことが重要となります。部下の話す内容に異議があったとしてもまずはしっかり受け止める事を心がけて下さい。

それでも部下がなかなか心を開かない、話をしてくれない場合は、ツールを活用しましょう。世の中にはコミュニケーションを円滑にするツールが数多くあります。詳しい話は別の機会にしますが、私たち取り扱う『ココトレ』も多くの会社でコミュニケーションツールとしてご活用いただいております。

特に今の若手社員はリアルなコミュニケーションよりもデジタルなコミュニケーションを得意としている為、面と向かって話し合うよりは媒体を介した方が円滑なコミュニケーションができると言ったケースも増えています。

〇Step3.クロージング
面談を終わる場合も配慮が必要です。面談の感想、面談前後の変化、面談での気づき等を互いに伝えあい、最後は感謝の気持ちや前向きな言葉を掛け合うようにしましょう。最初は照れ臭いかもしれませんが、こうした一つひとつの積み重ねが互いの信頼関係を築き、上司レベルを上げていく事に繋がります。

今回のまとめ

今回お伝えした事をまとめると、部下との面談を上手くやる又は継続させるには、2つの大前提を踏まえた上で、3つのポイントを押さえておく事が大切です。ここを意識して面談を実施していけば、部下が突然退職したり、面談をやっても続かないといった悩みからは解放されるでしょう。

(2つの大前提)
1.【面談】には
①【業務指導を目的とした面談】
②【人間関係構築を目的とした面談】
の2つがあり、どちらの面談なのかを明確にする

2.上司レベルを把握して面談に臨む(部下との人間関係を過信しない)
(3つのポイント)
1.上司レベルに応じた面談の基本パターンを選択する
2.上司レベルに応じた質問を投げかける
3.面談の“型”に当てはめて進行する

≪参考資料≫上司レベルチェックシート

■上司レベルチェックシート結果の見方
合計点に応じて、上司・部下間のレベルが以下のように定まります

レベル4/5・・・・45~50点
レベル3・・・・・・35~44点
レベル2・・・・・・25~34点
レベル1・・・・・・10~24点

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一本亮
本コラムの執筆者プロフィール
ココロデザイン株式会社 取締役 COO光永 尚慰
1976年生まれ。福岡県京都郡出身。松本労務経営研究所での労務管理業務を経て、人事コンサルティング会社大手の㈱トランストラクチャとビル管理会社である東京不動産管理㈱にて、採用・教育・人事制度の設計・運用に従事した後、2012年に独立し、社会保険労務士事務所「コンサルタントエム」と人事コンサルティング事務所である「みんなの人事部」を設立。社労士として労務管理業務に携わりつつ、人事コンサルタントとして中小企業~地元大手企業の人事制度設計・運用支援業務を行う。
2016年、人事のプロを養成・輩出し、企業の組織強化と日本全体の活性化を目指す一般社団法人日本人事技能協会を設立し、代表理事を務める。2018年よりココロデザイン株式会社の取締役に就任し、経営者の「ヒト」に関する悩みを解決する経営支援ツール『ココトレ』の開発に参画する。