これからの人事!人事が柱とすべきKPI(KGI)

人事部門は通常、管理本部と言われる事務を束ねる部門の直轄部署として存在することが多いといえます。これは、成り立ちとしてハローワークへの求人や入社退社処理、給与計算、労災対応といった事務的な手続きを総務などが行なっていたものを分離・独立させる形を取るからです。

ここに、採用だ、教育だ、評価だ、と機能を追加していったものがやがて人事部と言われるような代物になるのですが、人事担当者は「事務手続きを知っているものの、現場を知らない」、逆に「現場を知っているが、事務手続きを知らない」といった方の混成チームになるために、会社の方針や計画と関係なく手続きのみを行う、もしくは現場のお手伝いさんに留まる、といった存在になりがちです。

人事の仕事は、組織や人材の効率化にフォーカスし、企業を成長させること

経営者もその多くは組織づくりや人事について専門的な知識を持たないため、人事担当者に対してミッションは与えども、具体的な指示や業務の設計を行うことはできません。そこで、「外部のセミナーに行ってこい」「専門的な書籍を読め」と言われて人事担当者が学びに行くこととなります。

しかし、そこで展開される内容は、最新であれ何であれ、人事の各領域における一部分の話であって総論ではありませんから、「これが正しいのか」と鵜呑みにして会社に持ち帰り、会社の方針や計画と異なる動きをします。少し学力のある方だと、自ら書籍を紐解いたりMBAを取得するなどして知識やフレームワークを身につけますが、アカデミックに寄り過ぎて難解な言葉を発するだけで、現場の要望や経営者の意向と乖離した動きを取るようになります。

これが、私たちが「人事村の人事屋」と呼んでいる人事担当者となります。
本人は一生懸命やっているので、別に悪いわけではないのですが、投資している時間や労力に比して、売上や利益に響いていないのが問題なのです。人事部門は前回までに述べたように、「組織・人材という経営資源を最大限活用する」部門ですが、実際は上記のような状態ですから、相当な隔たりがあることを理解できるでしょう。

実際、管理部門たる人事の担当者が行う業務は、採用を除いてはほぼ売上に直結しません。しかし、評価制度を上手く活用した従業員の承認や定着のためのフォローアップ等を行うことにより、定着率が高まって補充の採用コストが減る(=結果、利益率に貢献する)などといったことは十分にあり得ます。

本来、売上は営業部門が作るもの、原価管理は製造部門が行うもの、利益管理はコストコントロールセンターである管理部門が行うものですから、役割上、真っ当な話なのですが、経営者によってはこの考え方ができません。「売上を作らないから管理部門は不要」と言う経営者は多くいて、組織や人材の効率化にフォーカスしないがために大きくなれない会社が非常に多くあります。ただ、それを課題として認識できなければ直しようがないわけです。これがいわゆる「経営者の器以上に会社は大きくならない」話といえます。

人事として業績に貢献するために、何をKPIとするかを決める

さて、話は少し脇道に逸れましたが、人事の目から見た時に「企業業績をどう分解するか?」これが総論の考え方(モノサシ)として必要になってきます。

通常、営業・販売の視点で見た企業業績の分解は「客数×客単価」で考えます。業界によってはもう少し分解して「立寄り客数×買上げ率×平均単価×セット買上げ率」「(新規客数+リピート客数)×平均単価×クロスセル率」などとすることがあります。これを人事目線で見るとどうなるか?ということです。

これは、
「人数×定着率×一人当たり売上高(または一人当たり営業利益)」
で考えると簡単に把握できます(ただし、同じビジネスモデルで比較した場合に限ります)。

つまり、
①人数が増えて、
②長く働いてくれて、
③一人当たりの売上高(または営業利益)が高くなれば
業績は上がるわけです。普通に上記の計算式で業績を計算してしまうと道理に合わないのですが、考え方として押さえて頂けると良いです。

労働分配率、人時生産性、平均年齢、平均在籍年数などの様々な指標を組み合わせればもっと精緻なものが組み立てられますが、現場の方が理解できませんから、ここでは取り上げません。そもそも現場で理解できないものを「イメージしろ」「勉強しろ」と言っても意味はなく、まるで小学生に「微分積分を何故知らないのか?」と言っているようなものです(また、それで見下す態度を取れば、現場からの協力が得られませんから、尚更本末転倒です)。

上記の算式を元に考えますと、人事として行うべきことは自ずから明確になってきます。

①人数(入社者数)
調べればすぐ細かい目標設定指標は出てきますので割愛しますが、いかに志向性・人物像と合う人材を採用できるか(=人材の質)と採用した人数(=人材の数)が重要となります。いわゆる採用業務のことです。

②定着率(100%-離職率)
採用しても、育ってきたところですぐに退職されるならば、いつまでたっても補充・教育し続けなければなりません。埋没コスト(=売上の機会損失)となり、時間・労力・採用コストが駄々洩れとなるため、定着させることが重要となります。定着させるためには、エンゲージメント(=会社への愛着)が必要となりますが、離職の原因の約半数は、上司・部下間の関係性の悪化です。そこで、当社ではモチベーションの計測と関係性の改善のために「ココトレ」を推奨しています。

③一人当たり売上高(または一人当たり営業利益)
採用しても、成果を生まなければ存在する意味がありません。そこで、各種トレーニングを行って売上高または営業利益に貢献してもらう教育研修が重要となります。これは、現場系のOJTと、会社人として共通認識を持つための研修の二つで成り立ちますが、人事が主として関わるのは後者ですね(もちろん、現場OJTに首を突っ込んで標準化や効率化を進め、業務の進捗管理をしていく方が良いですが)。

このように、人事が会社の業績に貢献していることを示し、人事として何を指標として活動していくか、を明確にするために、上記の3つの指標をKPIとして追いかけます
当然、定着率が高い企業やブランド力があって採用に困らない企業もありますから、その場合は異なる指標を基準とすると良いでしょう。あくまでも、上記に示した算式は一つの考え方であり、「人事として業績に貢献するために、何を追いかけるのか?」をハッキリさせることが非常に重要となります。

以上から、業績とブレず、経営者や現場とも共通で話のできる指標を用いることで、人事としての位置づけが明確になりますし、提案や管理もしやすくなることが見えてきたと思います。

次回からは、組織規模で異なる人事の担当範囲についてお伝えします。

一本亮
本コラムの執筆者プロフィール
ココロデザイン株式会社 代表取締役一本 亮

1978年生まれ。福岡県福岡市出身。東京海上日動火災保険株式会社等の勤務を経て、健康食品メーカーであるキューサイ、化粧品や医薬品を製造販売する新日本製薬の人事部門で組織編成を始め、採用・教育・人事制度・労務管理等の人事実務全般に従事し、制度設計と運用の両面で成果を残す。
2014年ココロデザイン株式会社を設立、ベンチャー企業~東証一部上場企業に至る人事戦略から実務に至るコンサルティングを手掛ける。2018年、人事経験をベースに人材定着・育成に有効なクラウド型定着検査サービス「ココトレ」をリリース。中小企業のみならず上場企業や大学等の教育機関も活用。

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