人がすぐに辞めちゃう会社の社長が
実行すべき3つのこと

「欠員補充の採用」がルーティン業務になっている・・・
スケジュール帳をみると毎週のように採用面接の予定が入っている・・・
現場社員が「人手が足りない」といつも愚痴っている・・・
社員を怒るとすぐに辞めてしまうので怒れず悩んでいる・・・

このように感じたことがあるなら、あなたの会社はおそらく慢性的な人手不足の状態に陥っているでしょう。

「人なんてやめてもすぐに採用すれば良いんじゃない?」と思っているあなたは、既に採っても採っても社員が辞めていく負のスパイラルに足を踏み入れているかもしれません。

今回のコラムでは、身近な事例を通して、なぜ社員は簡単に会社を辞めてしまうのか。辞めさせない為に経営者は具体的に何をすれば良いのか。についてお話します

『10,340,000』これってなんの数字だと思いますか?

これは横浜市、名古屋市、大阪市、福岡市(2018年8月現在)に住む人口を合わせた数とほぼ同じ数です。
実は1996年~2016年の20年間で減少した日本で働ける人の数(生産年齢人口15~64歳)なのです。
つまり、日本の中でも主要な都市である横浜市、名古屋市、大阪市、福岡市に住んでいた人が直近20年間でこの世からまるっと居なくなってしまった事と同じことです。

これってすごい事だと思いませんか?

その結果今の日本ではどんなことが起こっているか?
そう、ご存知の通り『人が採用できなくなった』のです。
その影響は身近なところでもすでに起きていますよね。

コンビニや飲食店の店員は外国人に変わり、スーパーのレジやガソリンスタンドの給油はセルフサービスに切り替わりました。

先日私が入った中華料理店の店員全てが、欧州系の人だったのでとても違和感を覚えたのですが、これからは当たり前の光景になるかもしれませんね。

スタッフの働くモチベーションを理解することが重要

先日、とある介護施設の経営者からこんな話を伺いました。

先月から介護職員として働き始めたパートのA子さん。経験も豊富で即戦力としてとても頼もしい存在でした。
近年人手不足もあいまって、入社後1ヶ月で正社員にならないかと打診したところ、「正社員になったら今まで以上に頑張ります!」と張り切っていた。

しかし、3ヶ月しないうちに『やっぱり今月いっぱいでやめさせて下さい。』と言ってさっさと辞めてしまったそうです。退職理由は正社員になると責任が重くなるから。
経営者は正社員になれば働く条件や待遇も良くなるので、きっと喜んで働いてくれると思っていましたし、本人も「正社員になれたらずっとここで働きたいです」と言っていたので、この結果にとても落ち込んでいる様子でした。

その後、Aさんの動向が耳に入ってきたそうですが、転職先の介護施設では条件や待遇は今よりも下がっているが、楽しそうに働いているとのことでした。

条件や待遇を上げさえすればA子さんはやる気を出して長く働いてくれると思っていたのに、なぜこんな事が起こったのでしょうか?

このケースの場合、条件や待遇を上げておけば、A子さんの定着に繋がるはずだ、といった経営者の考え方自体がそもそも間違っています。

冒頭で述べたように、現在私たちは経験したことのない人材不足の時代を迎えています。
逆を言えば、働き手からすれば働く場所は選び放題で、気に食わない事があれば辞めても、直ぐに次の職が見つかる時代に突入しています。

そのような状況下で、働き手の価値観が変化してきている事を経営者は理解しておかないと、本来採用できるはずの人も取り逃してしまうことになるのです。

働き手にとっては、条件や処遇だけでなく、上司や職場の人との「人間関係」担当する業務で感じる成長や手ごたえなどの「やりがい・働きがい」も働く上で非常に重要になるのです。

ここに、経営者と社員のギャップがあるのですが、経営者はその多くが「自分の将来は自分で切り開くもの」「自分で自分のやりたいようにしたい」「つきあう人は自分で選ぶもの」という価値観にもとづいて仕事をしていますが、社員はほぼ真逆なんです。

つまり、社員は「自分の将来は、会社が用意したいくつかの選択肢から選びたい」「会社が決めたルールや指示に従いつつ、限られた自由を満喫したい」「社内に嫌な人がいたら我慢してつきあわないといけない」という価値観にもとづいて仕事をしているのです。ここを見誤っている経営者が非常に多いといえます。

社員に長く働いて欲しいと願う経営者は、社員の条件や処遇を向上させるだけではなく、いかに社員の感覚で安心感を提供できるか、充実感や希望を持たせられるか、という視点で職場環境を整備する必要があるのです。

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経営者が今すぐ実行すべき3つのこと

では、経営者として、結局どのような事をすれば良いのでしょうか?

みなさんに具体的に実行して欲しいことは以下の“3つ”のみです。

1.セルフケアする
2.感情の3法則に沿った声かけをする
3.叱った後に期待の言葉をかける

セルフケアする

まず1つ目、「セルフケアする」から説明していきます。

前段で社員を辞めさせないためには、条件や処遇を向上するだけでなく、社員が安心して、充実感や希望を持てる職場環境作りが大切だとお話しました。
しかし現実問題、一番その環境を欲しているのが実は経営者自身ではないでしょうか?

経営者は常にストレスに晒されています。思ったように上がらない売上、目に見えて減っていく通帳の残高、気がつけば数日後に迫っている請求書の山。そのような環境の中で、一番頑張って戦い続けているのは、間違いなく経営者です。

しかし、社員はそんな状況はいっさいおかまいなしに、毎日決められた事を決められた通りにこなすだけ。正直、経営者からすれば「もっと働けよ」「数字を達成してないんだから休みなしでやれよ」と思うのが本音でしょう。

そんな彼らに対して、職場環境作りをする前に自分のやるべき事をやってよと言う気持ちになるのも十分わかります。
だからこそ、経営者自身の【セルフケア】が必要なのです。経営者が常に心身ともに健康な状態でないと、社員の事を気遣ったり、思いやったりする事ができないからです。

【セルフケア】と言っても大げさな事をする必要はありません。
例えば、以下のような事をしてみるだけで随分と心が軽くなります。

①自分の事を認める

一つの作業を終えたら、良かったことにフォーカスして「あー…無事に終わって良かったぁ」感じることを日課にしてみましょう。

ストレスを感じやすい人は大抵ストイックで、自分の状態をコントロールできません。忙しさにかまけて心が置いてきぼりになり、仕事や生活が苦しく感じるようになります。次第に、罰ゲームをしている感覚になると負のスパイラルに入っている証拠です。

仕事や生活が上手くいっているか、そうでないかは置いておいて、自分がベストを尽くしていることには変わらないはず。また、誰かが認めてくれたり褒めてくれるなんてことも少ないと思います。
なので、まずは自分で自分を認める、褒めることが重要です。

②シャワーで済ませず風呂に浸かる、また、できればスパなどに行って気分転換する

お風呂にゆっくり浸かってリラックスし、気分転換するようにしましょう。

実は、うつの人はほとんど全員がお風呂に入りません。そこまでの心のエネルギーがないからです。お風呂は緊張状態を解いてリラックスさせる効果があるので、お風呂に浸かってリラックスする事が重要です。

③一日を「良かった」で終える

寝る前に今日を振返り、まずは「今日一日いろいろあったけど、よく頑張った!」と声に出してみる習慣をつけてみましょう。

一日を「あれがまだ残っている」「今日はあいつのせいで…」などと、後悔や取り越し苦労で終えると確実に心がむしばまれていきます。

良かったことにフォーカスすることで、ポジティブになります。
上手くセルフコントロールしている経営者や業界リーダーは実践しています。

 

感情の3法則に沿った声掛け

次に2つ目、「感情の3法則に沿った声かけをする」を説明します。

感情の3法則とは、「安心の法則」「充実の法則」「希望の法則」をひとまとめにした呼称です。人間は感情を持つ生き物で、安心感があり、やりがい・充実感を感じ、未来に対する希望を持てると、前向きな力を発揮できると言う原理原則があります。

つまり先ほどお伝えした職場環境は社員が前向きな力を発揮するための条件作りなのです。
とは言っても理屈では分かるのですが、実際どうすればそのような職場環境が作れるのかよく分からないと思うので、今回はこれだけやればOK!という具体的なポイントをお伝えします。

①安心の法則

ⅰ)責めるばかりでなく、できるだけ人の『良いところ』を見てほめるようにする
ⅱ)欠点やミスを指摘する前に、まずは一言ねぎらう声かけ』をする

②充実の法則

ⅰ)日頃から「ありがとう・おつかれさま」を『気持ちを込めて』伝える
ⅱ)『何ができるようになったか』『どう成長したか』を本人に考えさせてから、
成長した点を上司から具体的に伝える

③希望の法則

ⅰ)『いつまでに、何ができるようになりたいか』を問いかけ、一週間後に食事や
お茶をしながら、本人の考えを聴き、上司や経営者の体験談を話す
ⅱ)上司や経営者自身が『今後どうなりたいか』を考えたうえで部下に語り
アイディアや前向きな意見を自由に出し合う

以上のように、それぞれの法則に応じてどのような声掛けや行動をとったら良いのかを記載しています。いきなり全部はハードルが高いと思うので、今取り組めることに狙いを定めて取り組んでみてください。

叱った後に期待の言葉をかける

最後に「叱った後に期待の言葉をかける」を説明します。

経営者は、日ごろから社員や部下をどのように育て、どう力を発揮してもらったらいいのか、をイヤと言うほど悩んでいます。そのためには常に冷静で、ティーチングやコーチング等の手法を用いて、彼らの能力を引き出す事が大切・・・云々・・・。

もう理屈は十分に分かっているのですが、いざその場になるとついカッとなって、怒鳴ったり、暴言を吐いたり、相手が傷つく言葉をかけたり。そして後で自己嫌悪に陥る・・・。

その気持ち、良く分かります(笑)

そこで、ぜひ経営者の皆さんに頭の片隅に入れておいてもらいたい事は、怒鳴ったり、暴言を吐いたり、相手が傷つく言葉をかけたりしても、最後に必ず期待の言葉をかけてあげるという事です。

そんなに難しい事ではありません。
結局、経営者がカッとなるのも、期待の裏返しなんですよね。

例えば、

ミスをした社員に対して、
「何やってんだ!お前は。前回も同じミスをしてるじゃないか!!」
で従来は終わっていたところを…
「お前の実力はそんなもんじゃないだろ?期待してるんだから、もっと真剣にやれ!」

とか、

目標を達成できなかった社員に対して、
「何で成果を上げてこないんだ!これで何か月目だ!!」
で従来は終わっていたところを…
「お前の可能性を信じて俺は任せてんだぞ!自分の力をみくびるな!」

など、常に【自分の感情+期待の言葉】をセットで使うことで、叱った後の社員のモチベーションは随分と変わってきます

最初は恥ずかしさもあるかもしれませんが、そこは会社のため、もっと言えば自分のためでもあるので、是非使ってみて下さいね。

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一本亮
本コラムの執筆者プロフィール
ココロデザイン株式会社 取締役 COO光永 尚慰
1976年生まれ。福岡県京都郡出身。松本労務経営研究所での労務管理業務を経て、人事コンサルティング会社大手の㈱トランストラクチャとビル管理会社である東京不動産管理㈱にて、採用・教育・人事制度の設計・運用に従事した後、2012年に独立し、社会保険労務士事務所「コンサルタントエム」と人事コンサルティング事務所である「みんなの人事部」を設立。社労士として労務管理業務に携わりつつ、人事コンサルタントとして中小企業~地元大手企業の人事制度設計・運用支援業務を行う。
2016年、人事のプロを養成・輩出し、企業の組織強化と日本全体の活性化を目指す一般社団法人日本人事技能協会を設立し、代表理事を務める。2018年よりココロデザイン株式会社の取締役に就任し、経営者の「ヒト」に関する悩みを解決する経営支援ツール『ココトレ』の開発に参画する。